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平成29(ネ)10066特許権侵害行為の差止等請求控訴事件

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平成29(ネ)10066特許権侵害行為の差止等請求控訴事件

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文言侵害、均等侵害に該当せず。「向かって延在し」と「まで延在する」の文言の解釈に関する争点。
文言の使い方を改めて見直す機会になりました。

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第2 事案の概要(略称は,原判決に従う。)
1 本件は,発明の名称を「骨折における骨の断片の固定のための固定手段装置」
とする発明に係る特許権(本件特許権)を有する控訴人が,原判決別紙物件目録記
載の各製品(被告製品)は本件各発明の技術的範囲に属すると主張して,①特許法
100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造,販売,譲渡,貸渡し,輸出及び
譲渡等の申出の差止め並びに被告製品の廃棄を,②不法行為による損害賠償請求権
に基づき,損害賠償金2億0178万6060円及びこれに対する不法行為の後の
日である平成27年5月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。
原判決は,被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するとは認められないとして,
控訴人の請求をいずれも棄却した。

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ウ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,「第2壁面(9)の前方部(9a)まで延在する」とは,ピン
の前方部(7a)が第2壁面の前方部(9a)に接触する必要はなく,前方部7a
のピン先端側の端(湾曲する手前の箇所)が前方部9a付近に位置していれば足り
ると解すべきである旨主張する。
そして,その根拠として,①「延在」は,文言上「接触」を要求するものでなく,
本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書では,ピン7の前方部7aが第2壁面9
の前方部9aに接触することを要求する場合には「接触」という文言が使用されて
おり,例えば,請求項1の記載を引用する請求項2は,請求項1に「接触」する構
成を付加したものであること,②本件明細書には,ピン7の前方部7aが第2壁面
9の前方部9aに向かって延在する構成と,ピン7の前方部7aが第2壁面9の前
方部9aと接触する構成が開示され,後者の構成が好適であるとされるにとどまり
(【0012】),「延在」と「接触」の文言も使い分けられていること,③本件
各作用効果の点からも,ピン7の前方部7aが第2壁面9の前方部9aに接触する
必要はなく,本件明細書の【図1】でも,本件各作用効果を奏する構成として,ピ
ン7の前方部7aが斜め方向に第2壁面の前方部9aに向かって延在するにとどま
る構成が開示されており,ピン7の前方部7aが第2壁面の前方部9aの付近に位
置していれば,本件各作用効果を得ることができることなどを挙げる。

(イ) 前記(ア)①について
構成要件Fの解釈で問題となるのは,「延在」の意味ではなく,「まで延在する」
の意味であることから,控訴人の主張は,その前提を誤るものである。また,請求
項1の記載を引用する請求項2の記載に「接触する」との表現があるからといって,
請求項1の「まで延在する」の意味を「接触する」よりも広義に解さなければなら
ないものではない。

(ウ) 前記(ア)②について
本件明細書の【0012】の記載は,前記1⑴(引用に係る原判決44頁10行
~18行)のとおりであり,文言が使い分けられているのは,「延在」と「接触」
ではなく,「向かって延在し」と「接触する」である。そして,「向かう」とは,
「ある場所や方向を目ざして進む」(広辞苑第5版)という意味であり,「まで」
(時間・距離・状態・動作が継続し,次第に進み,至る地点・時点を表す。乙6)
と意味が異なることは明らかであるから,「向かって延在し」を「まで延在する」
と同義に解することはできない。
(エ) 前記(ア)③について
前記イ(イ)のとおり,ピン7の前方部7aが第2壁面9の前方部9aの付近に位
置しているだけでは,本件各作用効果を奏するものとは認められない。また,本件
明細書の【図1】においては,ピン7の前方部7aが第2壁面9の前方部9aに接
触しているものであり,控訴人の主張は,【図1】の記載に反するものである。
(オ) 以上のとおり,控訴人の前記(ア)の主張は,いずれも採用できない。

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