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平成29年度特定侵害訴訟代理業務試験特許の小問(2)

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平成29年度特定侵害訴訟代理業務試験特許の小問(2)について、検討したいと思います。
良い頭の体操です。

(2)特許権者Xは、化学品の製造方法に関する発明(以下「本件特許発明」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。本件特許発明は、化学品を製造する際に反応工程Aを経る技術的特徴(以下「本件特徴」という。)を含むものである。
特許権者Xは、Yが本件特許発明に規定する製造方法を使用してY製品を製造していると主張して、Yに対し、本件特許権侵害に基づくY製品の製造販売差止請求訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。
上記事案を前提に、以下の各問いに解答してください。

ア 本件訴訟では、Y製品の製造工程中に本件特徴を含むか否かが争点となっている。Y製品の製造工程中に本件特徴を含むとの特許権者Xの主張に対し、Yは、特許権者Xの主張は事実に反すると考えている。
このような場合に、Yの認否として、特許権者Xの主張事実を単に否認することで足りるでしょうか。根拠となる条文を挙げつつ解答してください。

A

特許法では、下記のように規定されています。

(具体的態様の明示義務)
第104条の2 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

つまり、侵害被疑者(Y)は、特許権者(X)が侵害の行為を組成したものとして主張する方法の具体的態様を否認するときは、
自己の行為の具体的態様を明らかにしなければなりません。

そのため、侵害被疑者Yは、特許権者Xの主張事実を単に否認することで足りず、自己の行為の具体的態様を明らかにした上で、否認する必要があります。

イ 上記ア記載の争点との関係で、特許権者Xは、Yが保有すると考えられるY製品の製造工程表(以下「本件製造工程表」という。)の提出を求めたが、Yは、本件製造工程表にはY保有の営業秘密が記載されているとしてこれに応じようとしない。

① この場合、特許権者Xとしては、本件製造工程表の提出を実現するために、いかなる法的措置をとることが考えられますか。根拠となる条文を挙げつつ解答してください。

特許法では、下記のように規定されています。

(書類の提出等)
第105条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。

つまり、裁判所は、特許権者(X)の申立てにより、侵害被疑者(Y)に対して、当該侵害行為について立証するため必要な書類の提出を命ずることが出来ます。

そのため、特許権者Xは、本件製造工程表について書類提出命令のための申立てを裁判所にすれば良いことになります。

尚、書類提出命令があったにもかかわらず、当事者が書類の提出をしないときは民事訴訟法224条1項の規定が適用になり、裁判所は相手方の主張を真実と認めることができる。また相手方の使用を妨げる目的をもって書類を滅失等した場合も、民事訴訟法224条2項の規定により同様な効果を生ずる。

(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第224条
 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

侵害訴訟において厳しい規定ですね。

② Yは、特許権者Xによる上記①の法的措置に対して、どのように反論することが考えられますか。根拠となる条文を挙げつつ解答してください。

一方、特許法第105条の但し書きでは、

(書類の提出等)
第105条 ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

つまり、所持者(Y)は、書類提出命令に対して、その書類の所持者(Y)において正当な理由があるときは、その提出を拒むことが出来ます。

「正当な理由」は、例えば,相手方が書類を所持していることを期待できない場合や,書類に営業秘密が含まれている場合等が考えられる。ただし,後者の場合については,従来と同様に,営業秘密であれば直ちに正当な理由となるわけではなく,個別具体の事案に応じて,営業秘密を開示することにより書類の所持者が影響を受ける不利益と,書類が提出されないことにより訴訟当事者が受ける不利益とを比較考量して,提出を拒む正当な理由があるかどうかの判断を行うことになる(特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編『平成11年改正工業所有権法の解説』46頁(発明協会,1999年 。

ここでは、例えば、本件製造工程表に所持者(Y)の営業秘密が含まれる等と主張することになりますね。

③ 裁判所は、Yに対して本件製造工程表を提示させることができますか。そのためには裁判所はどのような手続をとることができますか。その手続に当事者等がどのように関与することができるかについても念頭において、根拠となる条文を挙げつつ簡潔に解答してください。

特許法105条1項を踏まえて、

(書類の提出等)
2 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

いわゆるインカメラ手続と言われるものです。

つまり、裁判所は、侵害被疑者(Y)の書類の提出を拒む正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者(Y)に対してその提示をさせることができます。その際、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない、言い換えると、裁判所のみが書類の提示を受け、書類の提出を拒む正当な理由があるかどうかを判断することになります。

また、仕事に戻ります。

最後まで見て頂きまして、ありがとうございました!

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